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オフィス・工場の停電&雷対策|UPSとSPDはどちらが必要?

落雷や停電から大切な機器を守る

「UPS(無停電電源装置)」と「SPD(サージ防護デバイス)」の基本と違い

夏のゲリラ豪雨や落雷、冬の積雪など、自然災害による「突然の停電」や「雷サージ(異常な過電圧)」は、パソコンやサーバー、家電製品にとって致命的なダメージを引き起こす原因となります。

そんな万が一の電源トラブルから機器を守ってくれるのが、「UPS(無停電電源装置)」と「SPD(サージ防護デバイス)」です。名前は似ているようで、実は全く異なる役割を持っています。今回は、それぞれの仕組みと違い、そしてなぜ両方が必要なのかを分かりやすく解説します。

UPSとSPDのイメージ

1. 停電時の「非常用電源」となるUPS(無停電電源装置)

UPS(Uninterruptible Power Supply)は、日本語で「無停電電源装置」と呼ばれます。簡単に言えば、「電気が止まったときに、代わりに電気を供給してくれる巨大なバッテリー」です。

💡 UPSの主な役割:データの保護と安全なシャットダウン

  • 突然の停電時に、内蔵バッテリーから電力を供給し続ける
  • 作業中のデータが消えるのを防ぐ(一時的な時間稼ぎ)
  • パソコンやサーバーを「安全にシャットダウン」する時間を確保する

デスクトップパソコンやNAS(ネットワークHDD)、サーバーなどは、急に電源が切れるとハードディスクが物理的に破損したり、システムファイルが壊れたりする危険があります。UPSがあれば、停電が発生しても数分〜数十分間は電力を維持してくれるため、その間に落ち着いてデータを保存し、安全に電源を落とすことができます。

UPSの給電方式の違いも押さえておきたいポイント

一口にUPSと言っても、内部の電力供給方式によっていくつかの種類に分かれます。導入時には以下の違いを押さえておくと、機器選定の精度が上がります。

UPSの主な給電方式
常時商用給電方式
普段は商用電源をそのまま機器に供給し、停電時のみ瞬時にバッテリー給電へ切り替える方式。構造がシンプルでコストを抑えやすい一方、切り替え時にごくわずかな瞬断が発生する。
ラインインタラクティブ方式
常時商用給電方式に電圧安定化機能(AVR)を加えた方式。瞬低(瞬間的な電圧低下)にも自動補正で対応でき、オフィス用途で広く採用されている。
常時インバータ給電方式
常に電気をバッテリー経由でインバータから作り直して出力する方式。停電時も出力が途切れず、電圧・周波数も常に安定。サーバーや生産設備など、瞬断が許されない重要機器向け。

サーバー室や生産ラインの制御盤など「一瞬の瞬断も許されない設備」には常時インバータ給電方式、コストと性能のバランスを取りたいオフィス機器にはラインインタラクティブ方式、というように用途に応じた使い分けが重要です。

2. 雷サージの「防波堤」となるSPD(サージ防護デバイス)

SPD(Surge Protective Device)は、「サージ防護デバイス」や「避雷器」とも呼ばれます。こちらは停電ではなく、「雷などによって電線から一気に流れ込んでくる異常な高電圧(雷サージ)をブロックする装置」です。

💡 SPDの主な役割:過電圧による機器の物理的破壊を防ぐ

  • 雷によって発生した異常な電圧・電流を大地へ逃がす
  • コンセントを通じてつながっている電子機器の基板が焼けるのを防ぐ
  • 通信線(LANケーブルや電話線)からのサージ侵入も防ぐ(通信用SPDの場合)

雷が落ちると、直接落ちなくても周辺の電線や通信ケーブルを伝って、数千〜数万ボルトの異常電圧がコンセントから建物の中に侵入します。これが「誘導雷サージ」です。精密機器は少しの過電圧でも回路が焼き切れてしまうため、SPDを設置して異常電圧を大地(アース)に逃がす必要があります。

SPDのJIS規格(クラス)と設置場所

SPDはJIS規格(JIS C 5381-11ほか)によって、設置場所や役割に応じてクラスI・II・IIIに分類されています。それぞれ担う役割が異なるため、原則として組み合わせて多段階に設置することが推奨されています。

SPDのクラス区分と主な設置場所
クラスI(第一段)
建物の引込口・受電盤付近に設置。直撃雷に近い、非常に大きなエネルギーの雷サージを大地に逃がす、最初の防波堤。
クラスII(第二段)
各階の分電盤に設置するのが一般的。クラスIで抑えきれなかった残存サージを、さらに低いレベルまで減衰させる。
クラスIII(第三段)
末端のコンセントや機器の直前に設置。精密機器を保護する最終防波堤として、より低い電圧レベルまで抑え込む。

このように、SPDは1台だけで完結するものではなく、「引込口 → 分電盤 → 末端機器」という多段階の防護によって、雷サージのエネルギーを段階的に減衰させていくのが基本的な考え方です。特に分電盤へのクラスII設置は、費用対効果の面からも最初に検討したいポイントです。

SPD多段階設置のイメージ

3. UPSとSPDの違い(比較表)

それぞれの役割を項目ごとにまとめました。

防ぐトラブル
UPS(無停電電源装置)停電・瞬低(一瞬の電圧低下)
SPD(サージ防護デバイス)雷サージ(異常な過電圧・過電流)
役割のイメージ
UPS(無停電電源装置)「予備バッテリー」「命綱」
SPD(サージ防護デバイス)「防波堤」「盾」
守るもの
UPS(無停電電源装置)作業中のデータ、システムの整合性
SPD(サージ防護デバイス)機器のハードウェア(基板、回路)
動作の仕組み
UPS(無停電電源装置)電気が来なくなったらバッテリーから出力する
SPD(サージ防護デバイス)過大な電気が来たらアースに逃がす
主な設置場所
UPS(無停電電源装置)サーバー・PC本体の電源直前
SPD(サージ防護デバイス)引込口/分電盤/末端コンセント(多段階)

4. 結論:最強の対策は「両方の組み合わせ」

ここまで読んで、「どちらか片方があればいいのでは?」と思った方もいるかもしれません。しかし、実際の落雷事故では以下のような連鎖がよく起こります。

【雷によるトラブルの連鎖】

① 近所に落雷が発生し、異常な高電圧(サージ)がコンセントから侵入する

② その直後、送電網がストップし、停電が発生する

もしUPSしか設置していなかった場合、①の雷サージによってUPS自体や接続されたパソコンが物理的に破壊され、その後の停電時にバッテリーが作動しない可能性があります。(※一部のUPSには簡易的なサージ保護機能がついていますが、大規模な雷サージには耐えきれないことがあります)

まとめ:大切な資産を守るためのステップ

まずは分電盤(ブレーカー)や重要なコンセントに「SPD」を設置して、外からの雷サージ(破壊的な高電圧)を強力にブロックします。その上で、内部の重要機器(サーバーやPC)の電源には「UPS」を挟み、停電時のデータ消失を防ぎます。

SPDで物理的な破壊を防ぎ、UPSでデータの消失を防ぐ

この二段構えこそが、現代のビジネスや重要なインフラ環境における正しい落雷・停電対策です。この機会に、ご家庭やオフィスの電源環境をぜひ一度見直してみてはいかがでしょうか。

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