「ホイストクレーンを設置するとき、どんな届出が必要?」「点検しないと法律違反になるって本当?」「クレーンを操作するのに資格は要るの?」——こうした疑問を抱えている工場・倉庫の担当者の方は少なくありません。
ホイストクレーンは労働安全衛生法およびクレーン等安全規則(クレーン則)によって、設置前の届出・設置後の検査・定期的な点検・操作者の資格取得まで、さまざまな法的義務が定められています。
この記事では、ホイストクレーンに関わる法律・法令を「設置前」「設置時」「運用中」の3つのフェーズに分けて、実務担当者にわかりやすく解説します。大阪・兵庫・奈良・京都・和歌山など関西エリアで設備を管理されている方は、ぜひ参考にしてください。
公開日:2024年1月1日 最終更新:2025年1月1日
ホイストクレーンに関係する法律・法令は複数あります。まず全体像を把握しておきましょう。
ホイストクレーンに関係する主な法令一覧
・労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)
→ 安全衛生管理の基本となる法律。クレーンの設置・点検・資格に関する規定の根拠
・クレーン等安全規則(クレーン則)
→ 労働安全衛生法に基づく省令。クレーンの製造・設置・検査・点検・操作資格を具体的に規定
・労働安全衛生法施行令
→ クレーンの種類・規模ごとの適用区分を規定
・建築基準法・消防法
→ 設置する建屋の構造・防火に関する規定(設備設置に間接的に関係)
以下では、実務上もっとも重要な「クレーン等安全規則」を中心に解説していきます。
吊り上げ荷重が0.5t以上のクレーン(ホイストクレーン含む)を設置しようとする事業者は、工事着工の30日前までに所轄の労働基準監督署へ「クレーン設置届」を提出しなければなりません(クレーン則第5条)。
設置届には以下の書類を添付します。
注意:届出なしに設置すると法令違反
設置届を提出せずにクレーンを設置・使用した場合、労働安全衛生法第20条違反となり、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります(同法第119条)。
吊り上げ荷重が0.5t未満のホイストは「クレーン等安全規則」の適用外となりますが、「小型移動式クレーン構造規格」や一般的な安全管理義務は引き続き適用されます。「0.5t未満だから何もしなくていい」ではない点に注意が必要です。
クレーンの設置工事が完了したら、使用開始前に落成検査を受ける必要があります(クレーン則第7条)。
落成検査は所轄の労働基準監督署が実施する検査で、以下の項目が確認されます。
【書類確認】
・設置届の内容と実際の設置状況の一致確認
・構造計算書・材料証明書等の確認
【実機確認】
・構造部分(ガーダー・サドル・ランウェイ)の状態
・機械部分(巻上装置・走行装置・ブレーキ)の動作確認
・電気部分(電動機・制御盤・安全装置)の動作確認
・ワイヤーロープ・フックの状態確認
【荷重試験】
・定格荷重の1.25倍の荷重をかけての動作確認(静的試験)
・定格荷重での走行・巻上・巻下動作確認(動的試験)
落成検査に合格するとクレーン検査証が交付されます。このクレーン検査証は、クレーンを設置した場所に備え付けることが義務付けられています(クレーン則第12条)。
クレーンを使用している間は、事業者が自主的に定期検査を実施することが法令で義務付けられています。これを定期自主検査と呼びます。
クレーン則第34条により、1年以内ごとに1回、定期に自主検査を行わなければなりません。検査の結果は記録し3年間保存することが義務です(クレーン則第36条)。
クレーン則第35条により、1ヶ月以内ごとに1回、定期に自主検査を行わなければなりません。こちらも記録・3年保存が義務です。
クレーン則第36条により、その日の作業を開始する前に、クレーンの状態を点検することが義務付けられています。
定期自主検査の義務まとめ
・年次点検:1年以内ごとに1回/記録3年保存
・月次点検:1ヶ月以内ごとに1回/記録3年保存
・作業開始前点検:作業日ごと(毎回)
点検の具体的な内容・記録の書き方については
「ホイストクレーンの点検・メンテナンス完全ガイド」もあわせてご覧ください。
定期自主検査の実施でお困りの方へ
大阪・兵庫・奈良・京都・和歌山の関西エリアで、ホイストクレーンの法定点検・年次点検をサポートしています。記録書類の作成代行も承りますので、お気軽にご相談ください。
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交付されたクレーン検査証には有効期間があります。引き続きクレーンを使用するためには、有効期間内に性能検査を受けてクレーン検査証を更新しなければなりません(クレーン則第40条)。
クレーン検査証の有効期間
原則として2年(労働基準監督署長が認めた場合は最大3年まで延長可)
性能検査は、登録性能検査機関(日本クレーン協会など)が実施します。
性能検査の申請は有効期間満了日の2ヶ月前までに行うことが推奨されています。申請が遅れると検査日程の調整に時間がかかるため、早めの対応が必要です。
ホイストクレーンを操作するには、吊り上げ荷重に応じた資格・教育の修了が法令で義務付けられています。無資格者に操作させることは法令違反です。
吊り上げ荷重別の必要資格
・0.5t未満:資格不要(ただし安全教育は推奨)
・0.5t以上〜5t未満:クレーン運転業務特別教育の修了が必要(クレーン則第21条)
・5t以上:クレーン・デリック運転士免許(限定なし)が必要(クレーン則第22条)
吊り上げ荷重0.5t以上5t未満のクレーンを運転するために受講が必要な教育です。学科(9時間)と実技(4時間)で構成されており、登録教習機関や事業者が実施できます。修了証は事業者が保管・管理します。
吊り上げ荷重5t以上のクレーンを運転するために必要な国家資格です。都道府県労働局長が指定する登録教習機関で学科・実技試験を受験します。
注意:玉掛け作業にも資格が必要
クレーンで荷物を吊り上げる際の「玉掛け作業」にも別途資格が必要です。
・吊り上げ荷重1t未満:玉掛け業務特別教育
・吊り上げ荷重1t以上:玉掛け技能講習の修了
ホイストクレーンに関する法令違反は、行政上の是正指導にとどまらず、刑事罰の対象となるケースもあります。主なペナルティを整理します。
① 設置届の未提出・虚偽届出
→ 6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金(労働安全衛生法第119条)
② 落成検査を受けずに使用
→ 6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金(同法第119条)
③ 定期自主検査の未実施
→ 50万円以下の罰金(同法第120条)
④ クレーン検査証の有効期限切れで使用
→ 50万円以下の罰金(同法第120条)
⑤ 無資格者にクレーンを運転させた
→ 6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金(同法第119条)
⑥ 事故発生時(管理不備が原因の場合)
→ 業務上過失致死傷罪(刑法第211条)・民事上の損害賠償責任
「知らなかった」は法的には免責理由になりません。特に中途採用や担当者交代があった際は、前任者からの引き継ぎを確実に行い、届出・検査証・点検記録の状況を必ず確認してください。
実際の現場でよく見落とされているポイントを整理します。自社の状況と照らし合わせてご確認ください。
□ クレーン検査証が設置場所に備え付けられているか
□ クレーン検査証の有効期限が切れていないか
□ 年次点検・月次点検の記録が3年分保存されているか
□ 操作者全員が必要な資格・特別教育を修了しているか
□ 玉掛け作業者が必要な資格・技能講習を修了しているか
□ 設置届の控え・落成検査の記録が保管されているか
□ クレーンを増設・改造した際に変更届を提出したか
□ 譲渡・リース機器の場合、検査証の名義変更を行ったか
設置済みのクレーンを改造・変更した場合や、別の場所へ移設する場合にも手続きが必要です。
改造・移設時の手続き
・クレーンの変更届(クレーン則第44条)
主要構造部分(ガーダー・巻上装置・電気設備等)を変更する場合、変更工事着工30日前までに労働基準監督署へ届出が必要
・変更検査(クレーン則第45条)
変更届が必要な改造を行った場合、変更後に労働基準監督署の変更検査を受ける必要がある
・移設の場合
別の事業場・場所へ移設する場合は、移設先で改めて設置届・落成検査が必要
大阪・兵庫・奈良・京都・和歌山を中心とした関西エリアで、ホイストクレーンの設置工事・電気工事を承っています。設置届の提出や落成検査については、お客様ご自身または行政窓口へのご対応が必要となりますが、工事に関するご不明点はお気軽にご相談ください。
「どんな工事が必要か知りたい」「費用の目安だけ聞きたい」といった段階からでも歓迎しています。
ホイストクレーンに関する法律・法令について、この記事では以下のポイントを解説しました。法令対応の漏れがないか、自社の状況と照らし合わせながらご確認ください。
設置工事の詳細は「ホイストクレーンの設置工事とは?種類・費用・工程を解説」を、点検の実務については「ホイストクレーンの点検・メンテナンス完全ガイド」もあわせてご覧ください。
この記事の執筆・監修
関西ファクトリー・ビルメンテナンスセンター 設備管理部
大阪・兵庫・奈良・京都・和歌山を中心に、工場・倉庫のホイストクレーン設置工事・法定点検・電気工事を手がける専門チームです。クレーン則・労働安全衛生法に関するご相談も承っています。